社会的危機と飲酒欲求

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 少し社会が混乱している状況ですので、社会的危機と個人の飲酒欲求について、自分の経験を書いてみます。

 
社会的危機と飲酒欲求

 東日本大地震の時のはなしです。

 当時私は東京におりましたので、直接被災したりはしていません。

 しかし、連日の被災地からの映像をテレビで繰り返し見るたびに、自分が被災したかのような不安や恐怖を感じていました。

 まだお酒をやめていない頃でしたので、悲惨な映像を見た後には、お酒をたくさん飲むことが多かったです。

 日本経済は今後どうなるのだろう、自分の仕事はどうなるのだろう、これからの生活はどうなるのだろう。

 心配になるたびに、気を紛らわすためにお酒を飲んで眠りました。

 また、震災の一年ほど前からタバコはやめていたのですが、原発の建屋が爆発する映像を見て、強烈に喫煙をしたくなったこともおぼえています。

 テレビで識者の悲観的な意見を耳にするたびに、喫煙への欲求がわきあがったりもしました。

なぜ飲酒や喫煙への欲求が高まったのか

 恐怖や不安は飲酒、喫煙への欲求を高めます。

 人は恐怖や不安を感じるとストレスをおぼえ、体内にアドレナリンとノルアドレナリンといったストレスホルモンを生成します。

 アドレナリンやノルアドレナリンが身体をめぐり緊張状態になると、身体はドーパミンを欲し緊張状態を緩和させようとします。

 通常ドーパミンは生活の中の様々な「楽しい」、「気持ちがいい」と感じる行為で分泌されますが、アルコール依存者やニコチン依存者の脳は、飲酒や喫煙のみでしかドーパミンを分泌できなくなっています。

(特定の行為のみでしかドーパミンを分泌できない状態が依存症です)

 不安や恐怖のストレスをドーパミンで緩和したい。

 しかし当時の私の身体は、ドーパミンを出すためには、飲酒か喫煙をしなければならないと認識していました。

 そのために私は、震災後、猛烈に飲酒量が増え、タバコを吸いたくて仕方なくなっていたのです。

対処法

 震災から1ヶ月ほどして、自分のこの状態はかなり異常だなと感じることができました。

 泥酔している時間が長時間なため、このままでは有事の際にも、まともな行動ができないとも思いました。

 不安や恐怖のストレスの根源はテレビでしたので、まずテレビを見ないようにしました。

 また、信憑性のないネットの記事や書き込みを見るのもやめてみました。

 もともと不安や恐怖や怒りを感情的に煽るような報道に、違和感もあったので、なるべく信頼できる各国の機関からの情報をネットで調べるようにしました。

 不必要かもと感じるような、いらない情報から、なるべく距離を置いたのです。

 恐怖を煽るだけの映像、喜怒哀楽を過剰に演出する映像、それについて感情的に話す人の声を目に耳にしなくなると、不安のストレスも減りタバコへの過剰な欲求はなくなりました。

 飲酒量も多少は減らすことができました。

人はパニックを起こしやすい

 テレビの映像を眺めているだけでも、人は軽いパニック状態に陥ります。

 人間は、他人が不安や恐怖でパニックになっている姿をみると、自分もパニックになるという特性を持っているからです。

 パニックが伝播するのは動物としての本能かもしれません。

 言葉を持たなかった猿の時代、細かい情報を伝達できなかった原始人の時代、群の仲間へのSOSは、パニックやヒステリーを活用し伝達していたからです。

 今、私たちは、言葉を持ち、文字を持ち、映像を使い情報を伝達していますが、その情報伝達が役目を果たすのは脳が冷静に動いている時だけです。

 ひとたび『恐怖でパニックになった人』や『ヒステリックな行動をとる人』を見れば、私たちの脳は緊急事態が起きていると判断し、自分もパニック状態になって原始的な危機回避の行動を取ろうとします。

 人類は何十万年も続いてきましたが、高度な知性を持ったのはごく最近です。

 そのほとんどの時代で生き残るために有効だった手段は、パニックやヒステリックな行動でしたので、今でも私たちは緊急時に原始的な行動をとりやすいのです。

深呼吸してリラックスをしよう

 しかし現代においては、パニックやヒステリックな行動をして、有益なことは何一つありません。

 全ての人が、脳を存分に動かして、自分や社会にとって有益な選択は何か、考え行うことが大切になります。

 最近の報道を見て、もし何かストレスを感じているかもと思ったら、

『自分は今、恐怖や不安で脳の活動が制限されているかも』

と、つぶやいてみてください。

 「自分もパニックになっていないかな?」と自らに問いかけてみてください。

 もしも恐怖感や不安感を自覚できれば、あとは深呼吸をしてリラックスすれば、ストレスを軽減することができます。

 緊張状態を緩和できれば、不必要なドーパミンを欲することもなくなり、脳はいつものように十全に活動しはじめます。

 

 飲酒の問題を抱えている人は、このような混乱した社会状況では、無意味な飲酒欲求に振り回されることもあるかもしれません。

 しかし、落ち着いて自分を見つめてみれば大丈夫です。

 強烈な飲酒欲求がわいた時は、ぜひ、一度深呼吸をしてみてください。

 そして、あなたや周りの人が笑顔になるために、何をすると良いかを考えてみてください。

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