磯村毅氏の本を読んで、とても勉強になったのでご紹介します。
まえがきには、薬物依存者の大半が自然に薬物をやめていると書かれています。
最近、ベトナム戦争から帰還した薬物依存者の25年にわたる追跡調査が行われ、実際に依存症の治療を受けた人は9%以下で、大半は治療を受けなくても自然と薬物をやめることができていたと分かりました。そしてこの人たちの断薬のきっかけとして最も多かったのは、人生のどん底まで突き落とされるような泥まみれの体験ではなく、むしろ薬物を使い続けるメリットとデメリットを天秤にかけて、自分にとってどちらが得か冷静に判断してみること、つまり「自分の現状の再発見」だったと分かったのです。
依存症の悲劇的で回復が難しいというイメージは、極端な報道のせいだとも述べています。
従来、依存症は精神科病院を中心に治療が行われ、その研究も重傷者対象のものがほとんどでした。またテレビなどの報道も極端に悲惨な例ばかりをクローズアップし、依存症は、進行性の悲劇的な病で、大変な犠牲を払わなければ回復は難しいという、イメージができあがってきたのです。特に薬物依存や、アルコール依存にその傾向が現れています。
磯村氏は他の精神科医とは少し違った見方で依存症を捉えている方です。
また、断酒後の脳の変化についてはこのように書かれています。
脳神経の爆発的再生
断酒後1週間で増殖が倍増
(Nixon,K.,2004)
↓
急速に進む脳の再生
脳萎縮をきたしているような場合でも、数週間、数ヶ月、数年という単位で回復していく(Sullivan,E.V.,2000)
↓
生活と人間関係の再生・再建
(本来の姿を取り戻す)
アルコールによる脳の破壊については多くの本やサイトで述べられていますが、
脳の再生について語られているのを読んだのは初めてでした。
ドパミン神経の回復についても記述がありました。
他の依存症でも断薬後、直接ドパミン神経を調べたデータは見つけられませんでしたが、慢性のアルコール障害では脳の再生が1週間で爆発的に進むこと(Nixon,K.,2004)が分かっています。
実際臨床的にも、慢性のアルコール依存や、薬物依存で、錯乱状態にある人でも、1週間から2週間以内にはそれなりの普通の状態に回復していくので、急性期の回復にはそのくらいの期間をみておけば良いのではないのかと思います。
磯村氏の依存症への考え方は、
自分を客観的に見て「気づく」ことで、「誤った思い込み」をリセットし、
生活や対人関係を整えることで、依存症から解放されて明るく生活して行こう。
ということだと読み取れました。
自尊心の回復にも重点を置いているのも素敵でした。
タバコやギャンブル、摂食障害についても多く記述されており、大変ためになる本です。
興味がある方は手にとってみてください。
また面白い本があったらご紹介しますね!