⑥エキセントリックな主張

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友人の主張はエキセントリックだと思いました。

でも、その主張の是非を問うより、私はとにかくお酒がやめたい。

「お前の言ってること信じたら、簡単に酒やめれるの?」

「ああ、簡単にやめれる。

どうする? 酒やめたくないならもう言わないけど」

私は続きを促します。

「俺は酒をやめてわかったことがある。

人生は酔わないほうが圧倒的に得なんだ。

これからは酒を飲まない人と行動を共にしていい。

そもそも酒を飲まない女を素面で口説く方が、成功率が高くて楽しい。

酒を飲まない友達の方が多趣味で博識で楽しい。

いいか、酒を飲めないのは決して寂しいことじゃない。

俺たちは飲んだ方が楽しいと思わされていただけだ。

実際は飲まない方が100倍楽しい。

仕事の付き合いで酒を飲まなくちゃ、とかも幻想だ。

飲みニケーションとか言ってくる奴は全員相手にするな。

強要してくる奴は全部ゴミだから切っても問題ない。

飲まないで関係を作れる人とだけ付き合えばいい。

バカをもっとバカにさせたいと望んでいる誰かがいるんだよ。

酒は素晴らしいと宣伝して酒を買わせているだけなんだよ。

金払って、時間と健康を失ってバカになるだけ。

酒が良いものというのは、全部洗脳だ。

これからは会社で嫌なことがあっても、帰ってから酒なんて飲まなくていい。

もし会社が悪いなら、素面で法律の勉強して裁判をするなりして戦った方がいい。

もし自分が悪いなら、勉強してスキルアップして見返すか転職すればいい。

これからは何か嬉しいことがあっても、酒なんか飲まなくていい。

すごく嬉しい時は、支えてくれた大切な人たちに感謝して、

その人たちにご馳走したりプレゼントをあげたりすればいい。

自分が嬉しくて酔っ払うより、周りの人を笑顔にした方がもっと嬉しいことが起きる。

どんな感情が沸いても、本来、酒は必要ないんだ」

私は思わず口にしてしまいます。

「俺、素面で女の子口説いたことない」

友人は答えます。

「酔わない方が頭が働くから、落とせる確率はかなり上がる。

今は酔わずに落とせる方法を知らなくても大丈夫だ。

素面で3回も場数踏めば適切なアプローチの仕方を学べる。

だいたい自分が泥酔して、さらに泥酔した女を口説くとか、

冷静に考えると非効率的だと思わないか?」

コーヒーを飲みながら聞いていると、なんだかだんだんそんな気もしてきます。

「酒を簡単にやめたいんだろ?

俺たちは悪い奴らに騙されて、酒を良いものと思わされ、飲まされてきたんだ。

酒は悪なんだ。

これからは知識をつけて、自分らしく生きることで、その巨悪と戦っていけ」

友人の主張は、まさかの酒陰謀論でした。

けれどそういう設定を信じるだけでお酒がやめれるなら、

安いものなのかもしれないです。

酒陰謀論を信じても、別にお金を取られるわけじゃないし、何か失うわけでもないし。

私は決めました。

その日から酒陰謀論で禁酒を始めました。


お酒のやめ方

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